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1.キリスト教はどのようなものなのですか?

紀元後1世紀、現在のパレスティナ(イスラエル、レバノン、シリア、ヨルダン地を含む地帯)のガリラヤ地方(イスラエル北部)ナザレから現れたイエスを救世主(メシア)イエス・キリストと信じ、ユダヤ教の聖典を起源とする『旧約聖書』と、イエスや(その弟子である)使徒たちの言行を記した『新約聖書』を聖典・規範とし、隣人愛・神の愛(アガペー)を説く世界宗教です。

世界における信者数は20億人強で、すべての宗教の中で最も多くの信者がいます。その教えは、全ての人間は生まれながらに罪(原罪という。全く正しい存在である神に対して、正しい立場を貫くことができない)の中にある存在で、自らその罪をあがなう(つみほろぼし)ことができないものなのですが、(神であり)人であるイエス・キリストが十字架で死なれ、その3日後の復活したことによって、イエスをキリスト(救い主)と信じるものは罪の赦しを得て永遠の生命に与かることができるということです。

3.正教というのも聞きますが、どのようなものですか?

正教も、キリスト教の教派のひとつです。ギリシャ正教もしくは東方正教会(とうほうせいきょうかい、Eastern Orthodox Church)とも呼ばれています。日本語の「正教」、英語名の"Orthodox"(オーソドックス)は、ギリシャ語のオルソドクシア という言葉が起源で「正統な教会」という意味を持っています。正教もカトリックと起源は同じく1世紀の初代教会にあります。もともと、いまのカトリック教会と正教会は1つのものでした。ただ、カトリック教会はローマに教皇を中心として発展していったのに対して、正教会はコンスタンティノープル(現在のイスタンブール)の総主教を中心にして発展しました。ローマ帝国はコンスタンティヌス帝の時代をすぎて、やがて395年に東西ローマ帝国に分裂します。そして西ローマ帝国は476年に滅亡し、政治権力が群雄割拠状態をむかえ、カトリックに対する影響力を大きく生むことなく発展していったのに対して、正教会は東ローマ帝国(のちのビザンチン帝国)の影響を常に受けていました。相互の交流が少なくなっていったことから、考え方の違いを生み出し最終的には1054年に大シスマと呼ばれている相互の教会同士が互いのトップ(つまりローマ教皇とコンスタンティノープル大主教)を破門するという(といわれている)事件が起こり2つに分裂しました。

カトリックと正教会のめだつ違いは“暦”です。現在、全世界で使用されている西暦は”グレゴリオ暦”と呼ばれて、1582年にローマ教皇グレゴリオ13世が採用したものです。しかし、正教会はその影響を受けませんでしたので、その前つまりジュリアスシーザーそしてその後のローマ初代皇帝のアウグストゥスが採用したユリウス暦を使用しています。そのため祝祭日が違うということがあります。その他、儀式、僧職者の妻帯等、聖像の扱い等に違いがあります。カトリック教会と正教会の和解への取組みも進んでいますが、まだまだ十分ではないようです。

2.カトリックとプロテスタントという言葉を良く聞きますが何が違うのですか?

おおまかな言い方をすれば、歴史的な経緯とイエス・キリストの教えの捉え方の違いといえるでしょう。

まず歴史的経緯を述べます。キリスト教は、イエス・キリストの死、復活そして昇天のあと、使徒たち(弟子)を中心としたユダヤ教の一派としてスタートしました。その後使徒たちの伝道活動により、地中海世界にひろがっていきました。これは、ローマ帝国という統一国家の存在そして、ディアスポラとよばれたユダヤ人の共同体が、古代地中海世界の諸都市に存在したことが理由にあげられます。このころのキリスト教会を、初代教会と呼びます。ローマ帝国の度重なる迫害にもかかわらず、民衆だけでなく支配階級にキリスト教の信仰がひろまったことにより、教会の組織化がなされていきます。(教皇、司教、司祭制度)やがて、313年に有名なミラノ勅令が時のローマ皇帝コンスタンティヌス1世により発令され、キリスト教は公認されます。さらにローマ帝国の国教となるとともに、神学的位置づけの違いが大きな争いとなり、政治権力の介入を招きました。ニケア、エフェソ、カルケドン公会議が行われ、ようやく正統な信仰が確立しました。これが今日のカトリック教会の基礎になります。

カトリック教会はローマ教皇を中心とし、全世界に10億人以上の信徒を有するキリスト教の最大教派ですが、「カトリック」とはギリシャ語の普遍的ということばに由来しています。その組織は「ペトロの後継者(ローマ教皇)と使徒の後継者たち(司教)によって治められる唯一、聖で、普遍的、使徒的な教会」という表現で表されています。教説(教え)は「聖書と聖伝」という言葉であらわされるように、旧約聖書およびイエス・キリストと使徒の教え(口承されたものに由来し、教父たちによって研鑽され、多くの議論を経て公会議などによって確立されてきたものです。

一方プロテスタント(Protestant)は、16世紀の宗教改革運動を始めとして、カトリック教会(または西方教会)から分離し、特に福音主義、聖書のみを信仰の基本とするキリスト教諸派の総称です。日本ではカトリック(旧教)に対し、「新教」(しんきょう)とも呼びます。

ただし、聖公会(英国国教会)のように、教義上はプロテスタントですが、儀式・礼拝はカトリックという独自の立場の教派も存在しています。プロテスタントは特定の教派・教団を指す名称では無いので、神学や教義解釈がそれぞれ異なる多数の教派(主にカトリックから分裂した教派、もしくはそこから更に分裂した教団)を総称して呼んでいるに過ぎず、よってプロテスタントという教派(宗派)は存在しません。

それぞれの教えの捉え方ですが、カトリックは、先に述べたようにペトロの後継者(ローマ教皇)と使徒の後継者たち(司教)によって治められるものなので、階級制度が存在しますが、プロテスタントの場合は原則的には階級はありません。牧師、執事(長老)は役割の違いという理解をしています。これは私たち聖路教会が属しているバプテスト教会では顕著です。

また、カトリックは、聖書だけでなく、聖伝(言い伝え)を重要なものとしていますが、プロテスタントは聖書のみを信仰のよりどころとしています。さらに、カトリックの礼拝で一番重要なものは、聖体拝領という儀式になりますが、プロテスタントにおいては聖書の朗読とその解き明かしである説教が中心となります。このような大きな違いもありますが、その一方では、教派を越えて、一致団結して行動していくという動きも20世紀にはいってからは存在しています。(エキュメニカルという言葉を使います) 一番卑近の例では、日本聖書協会が出版している新共同訳という聖書は、カトリック、プロテスタント教会で共同して翻訳したものであり、多くの教会がこの聖書を現在使用しています。

4.プロテスタントもいくつかの団体に分かれているようなのですが何故ですか?

カトリックとプロテスタントの違いに述べたように、プロテスタントとは特定の教派・教団を指す名称ではなく、神学や教義解釈がそれぞれ異なる多数の教派(主にカトリックから分裂した教派、もしくはそこから更に分裂した教団)を総称して呼んでいるからです。更に同じ教派でも、法人としてはさらに分かれていることもあります。これは移民や宣教地域等によって成立母体が異なる場合などが理由です。たとえば、聖路教会はプロテスタントのバプテストという教派に属しておりますが、法人としては、日本バプテスト同盟に所属する教会である、といったような例です。